更年期からは、あらたな人生がはじまります

更年期は、女性であれば誰もが通らなければならない通過点です。そうはわかっていても、なんとなく寂しい気持ちになってしまうのは、更年期に「人生のたそがれどき」のイメージかおるからでしょう。

でもはたして人生のたそがれどきなのでしょうか。人生85年の長寿の時代。40代はまだ人生の折り返し地点に立ったところです。ライフサイクルを1日の時間の流れにたとえると、史年期はランチのあとのお茶の時間。いってみれば人生の午後みたいなものです。たそがれるには早すぎます。

これまでは、子育てにあるいは仕事にと、人生を一生懸命ひた走りに走ってきたことでしょう。だから、ここでちょっと休憩を人れて自分をねぎらってあげましょう。そして、これからはじまろうとしている人生の後半を、いかに楽しく充実させていくかを考えていきましょう。

更年期のことを英語で「Change of life」ともいうそうです。人生の午後は、これまでとは違った、新しい自分に出会えるかもしれません。

さまざまな要因が複雑にからみ合って起こる更年期の症状

更年期のからだの変調は、たいしてつらさも感じずにやり過ごしてしまう人もいれば、日常生活に支障をきたすほどの人もいます。かつては、更年期に起こるこうした症状をすべて「更年期障害」と呼んでいましたが、現在は日常に支障があるほど症状がひどいものを「更年期障害」と呼び、それ以外の場合は「更年期症状」と呼んで区別しています。それにしても、なぜ症状の出方に個人差が大きいのでしょうか。いろいろな原因が考えられますが、大きく分けて次の3つのことがあげられます。

卵巣機能の衰え方の差や体質的な要因

更年期は、卵巣機能の低下によるエストロゲンの減少が直接の原因ですが、卵巣機能の低下の度合いやホルモン分泌の低下の起こり方は人によって異なります。さらにホルモン分泌の乱れに対して、からだが敏感に反応する人もいて、こうした要素が症状の出方の差に関係があると考えられます。

一般に、ふだんからホルモンの分泌が不規則で月経不順だったり、自律神経失調ぎみの人ほど、更年期症状が出やすい傾向かおるといわれています。また不規則な生活や過労、睡眠不足なども、ホルモンや自律神経の乱れに拍車をかける原因になります。

閉経以降は、老化にともなう諸症状が現れてきます

更年期の比較的初期の症状のほとんどは、ホルモンのアンバランスを背景にして起こる自律神経失調が原因です。からだがエストロゲン不足に慣れれば自然とおさまっていきます。また、HRT(ホルモン補充療法)によって症状が軽減されることもわかっています。

しかし、閉経後からは性交痛や腔炎など別の症状が起こってきます。これらは、エストロゲンの影響を受けていた皮膚や粘膜の老化が原因で起こってくるので、更年期を過ぎても続きますが、HRTや漢方療法、その他の対症療法で症状を緩和することは可能です。エストロゲンの減少はからだの自然な変化。仲良く付き合っていくことも考えてみましょう。エストロゲン低下は、骨やコレステロール代謝にも影響します。

ところで、エストロゲンは骨量の維持や、コレステロールの代謝などにもかかわっていますから、エストロゲンの減少によって、骨粗しょう症や脳梗塞、心筋梗塞などにつながる高脂血症、高血圧などの生活習慣病のリスクが高まります。また子宮がん、乳がんの発上率も急上昇します。この時期に起こる不調が、更年期に上る症状だと思ってがまんをしていたら、病気に上るものだったということがあります。不調を感じたらまず婦人科を受診して、それが更年期に上るものかどうかをきちんと確認することが大切です。同時に、骨組しょう症や生活習慣病の予防にも注意する必要があります。

 

 

多くの女性は、40代に入ると卵巣の働きが衰えて、エストロゲンの分泌量が急激に低下していきます。これにより、これまで正しく行われていた視床下部→下垂体→卵巣の連携が大きく崩れてしまうのです。

脳の視床下部は、血液中に流れ込むホルモン量をチェックしていますから、エストロゲンが不足すれば、これに驚いて情報の伝達役の性腺刺激ホルモンを懸命に分泌するようになります。つまり性腺刺激ホルモンを多く分泌することに上って、卵巣に「もっとエストロゲンを出しなさい」と矢の上うな催促をするようになるのです。しかしどんなに催促されても、卵巣はもうその命令にこたえることができません。エストロゲンの分泌量はさらに減っていきます。

こうした状態が続くと、視床下部は「なぜ命令に従わないのか」とあわてます。そしてその混乱は、同じところに中枢をもつ自律神経にも飛び大してしまうのです。

自律神経というのは、体温や発汗、呼吸や消化、脈拍、血圧などを自動的にコントロールして一定に保つ働きをしている神経です。たとえば、汗をかいて体温を下げたり、緊張すると動悸が高まるのも自律神経の働きなのです。その自律神経が乱れるために、暑くもないのに大汗をかいたり、じっとしていても動悸が起こるなど、からだのあちらこちらにひずみが出てきます。これが更年期の比較的初期に起こりやすい不調の正体。ホルモンのバランスが大きく崩れるこのころは、おもに血管運動神経系や精神神経系の症状が現れます。

更年期を迎えたあなたのからだには、いまどんなことが起こっているのでしょうか。このことを正しく理解するために、ここでは女性ホルモンの分泌のしくみについておさらいをしていきましょう。

女性のからだのリズムをつくるホルモンのしくみ

女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があって、どちらも卵巣から分泌されます。といっても、卵巣から勝手に分泌されているわけではありません。ホルモン分泌の司令塔となっているのは、脳の視床下部というところです。

視床下部は、血中に流れ込むあらゆるホルモンの量をつねにチェックして、少しでも分泌量に増減があると、これを瞬時にとらえて、ただちに正常な量にするように指令を出します。

指令を受けて実際に行動するのは、祝床下部のすぐ下にある下垂体という器官です。

すると下垂体は、性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)を分泌します。

卵胞刺激ホルモンは、卵巣に働きかけて、卵胞を成熟させて、エストロゲンの分泌を促します。

一方の黄体化ホルモンは、成熟した卵胞を刺激して排卵を促します。また、排卵後の卵胞に黄体をつくらせて、プロゲステロンの分泌を促す働きがあります。

このようにホルモン分泌は、視床下部→下垂体→卵巣の連携によって行われていますが、往日したいのは、この一連の流れの中には、フィードパック機能かおるということです。

フィードパック機能とは、女性ホルモンが一定量分泌されると、脳がその情報を受けとって「ストップ!」の指令を出し、足らなければ「もっと出して」と指令を出す機能のこと。まるで精密機械のようです。

思春期から性成熟期までのあいだは、このやりとりが正しく行われて、正常な月経周期が保たれることになります。